東京、黙ってろ。

わかってる人にはバレてると思いますが、今年の5月から仙台に来ております。
去年の震災で東北の仕事が増えることが予想されたので、そのヘルプのためなのですが。
そこで8ヶ月、こちらで実際に被災地を見て、仕事して、色々と思うところはありまして、そのつどつどTwittertweetして吐き出してたのですが、一番強く感じたことを書こうかと。


自分がこっちに来て一番強く感じたのは「東京のテレビ局、東京キー局が邪魔すぎる」ということ。


東京キー局ってのはTBSとかテレ朝とかフジとか日テレのことで、NHKの東京局も含んでもいいと思います。
いわゆる「全国放送」ってヤツね。


自分は去年の震災のときも阪神淡路大震災のときも、大きな事件や事故、自然災害が起きるたびにどうしてテレビって現地の住民が一番に知りたいと思ってる情報を流さずに、お涙頂戴の話や悲惨な境遇の被害者ばかり映すのだろうと思ってまして。
例えば去年の大震災。
被災地の人たちが知りたい情報って津波が押し寄せる映像を延々と見させられることでしょうか?
地震が発生した原因や、津波が予想以上の高さで押し寄せた原因を司会者と識者が延々と頭をひねっている画像でしょうか?
そうではないですよね?
給水所や補給所、避難所の情報や道路の情報、物資の情報やインフラの情報、危険情報だったはずです。
自分はなぜそういう被災地の身の回りの情報をなぜテレビが流さないのか延々と疑問に思ってまして。


やっとわかったのは、それは流れる映像が「東京キー局」の番組だからなんですね。
「全国放送」をうたってはいますが「東京キー局」は東京・関東地方の地方放送局のひとつです。
だから地方の小回りの利いた情報は得られないし、東京の地方放送局ですからどうしても東京周辺の人が知りたい・興味がある情報を流すことになります。
これが現地が知りたがってる情報を得られない原因になってるなと。
逆にいえば地方で何かあったときに全権をその地方放送局に任せ、地方局が現地が欲しがってる情報を流せばいいのに、それが出来ないぐらい地方局って力がないんだなと。
何のための公器なのですか? と問いたいのですが。


僕がそれを強く感じたのは12月7日、仙台で強めの地震があったときです。
津波が来るのではないかということで緊急放送がされてましたが、19時前ぐらいかな? 津波が来ないんじゃないかなぁとなるとNHK以外の放送局は通常放送に。
NHKも19時半ぐらいには通常放送に戻りましたが、宮城県、通常放送が終わったあとも電車や地下鉄が止まり、道路は大渋滞し、交通麻痺が続きました。
これ、なんで交通情報を流してくれないのかなぁと。
道路は大渋滞し、救急車も立ち往生する状態ですよ。
なのにテレビはバラエティ番組を流し、タレントのバカ笑いを映してるの。
これを「緊急車両が通行できなくなってます。不要不急の自家用車の通行は控えてください。企業も車の運用は時間をおいておこなってください」と放送し続けるだけでも効果があるだろうにと。
それが出来ないのが今の東京キー局と地方局の関係をあらわしているなぁと。


そして震災後の今、まだ1年8ヶ月しか経ってませんが、被災地のことがどんどん風化していってます。
被災地の近くにいてもそれを実感します。
それはなぜなんだろうと思うと、テレビで被災地のことが流れなくなってるから。


7月に宮城〜福島、岩手〜宮城の沿岸の被災地をまわってビックリしたのは、瓦礫がまだ山積みで処分されてなく、被害を受けた学校はそのままで、上モノは片づいてるけど基礎は残された住宅の跡地がごっそり残ってることでした。
道路は仮復旧だったり片側通行で工事中だったり。
本当に上モノを片づけただけ。
先日12月あたまに女川町を回ってきましたが、雪が降ると残された基礎が見えなくなって、そこに集落があった、そこに人が住んでいたってのが消えてなくなるんですね。


もうすぐ2年ですけど、本当に上モノを片づけただけ。
そんな場所で「復旧・復興」を語っても上滑りするだけ。
じゃあどうすれば改善できるかというと、東京の中央官庁や行政組織が持ってる権限や予算をこっちに、東北に寄こせと。
そして地方の権限で現地に即した復旧・復興プランを作り、現地に沿ったことに使うからと。
東京の中央官庁に任せるとどうなったかというと、東北と全然関係ないところに予算を付けまくったじゃないですか。


で、そういう復旧・復興が進まない中、先日衆議院選挙がありました。
テレビが延々と選挙の争点にしようとしたのが「脱原発」。
被災地の現状を見てる人間からすると「おいおい、まずは被災地の復旧・復興だろうが!?」と。
その後もテレビで被災地の復旧・復興に触れることはなく、「脱原発がー!! 脱原発がー!!」と騒ぐだけ。
結局これも東京キー局が東京周辺の視聴者の興味に合わせて番組を作ってるからなんですね。
挙げ句の果てには「公共工事は悪!!」と被災地の復旧・復興そっちのけで、公共工事を進める公約を出してる政党を「公共工事は悪!! 公共工事は悪!!」と叩きまくり。


東京キー局で番組作ってるヤツ、被災地に来て同じことを言ってみろよ?
そして地方局で番組作ってるヤツ、それは違うと異議の声をあげてみろよ?
何が公器だ? ふざけんなよ!?


新聞も同じだ。
選挙後、「中韓との関係改善を」と書いてる新聞ばっかりで「被災地の復旧・復興を押し進めてもらいたい」と書いてる新聞はゼロ。
もうお前ら黙ってろよ!?
全国紙も結局東京の地方紙だから東京周辺の購読者が感心あることしか書かないのですよ。


全国放送や全国紙って地方の実情を「東京の都合」に塗り替えちゃうのですね。
地方の実情じゃなく東京の意見を「全国的な世論」として塗り替えてしまう。
そしてなまじ「全国」だから、その声はやたらデカくて影響力がありすぎるんですよ。
これが僕は大迷惑だと思ってます。


テレビが被災地のことを流さなくなれば被災地の現状なんて「なかったことになっちゃう」。
新聞が被災地の記事を流さなくなれば「なかったことになっちゃう」。
なかなか復旧・復興が進まないことを現地の実情を語ることなく番組や記事にしちゃうので「ぐずぐずしてる現地」という印象を「押しつけちゃう」。
「マスコミの影響なんて今どき無いよ、今はネットの時代だぜ!?」って言われても、そのネットの情報もソースはテレビや新聞だったりするわけで、この「なかったことになっちゃう」や「押しつけちゃう」はまだまだ怖い存在ですよ。


そして逆に考えれば地方局、何やってんだ? って話にもなるんですけどね。
もっと地方ならではの地域に密着した番組を作ることも出来るだろうに。


この東京キー局と地方局との歪みって言うんですかね。
東京キー局の力が強すぎて、地方の情報が得られなくなってる。
地方が本当に言いたいことも声になって届かなくなってる。
これを改善しないと被災地の復旧・復興は進まないんじゃないかなぁ。
いや、こっちに権限をくれて、こっちが勝手に動いていいんなら別にいいんですが。
東京の中央官庁で握ってる権限と予算をこっちにくれればいいんですが。


こっちで仕事をするたびに、被災地を見るたびに思います。
「こっちを見る気も伝える気もないのなら、東京、黙ってろ!!」と。


<PS>
こっちの人は震災のときに東京や関東の人に助けてもらったので、そんな悪し様に東京のことを悪く言わないでくれと僕に言ってきます。
でもねぇ、自分はこっちに来てから色々と思うことがあって、そのうちのいくつかは東京の声のデカさが原因になってると思うのですよ。
東京キー局が全国に一律に放送するんじゃなくて、地方局がもっと自由に放送出来たら、とかね。
この東京の声のデカさを押さえないと弊害だらけなんじゃないかなぁと思っています。