作者の姿が見えない電子書籍化について。

電車の中でiPod touchの産経新聞アプリを読むのが日課なのですが、ちょっと気になる記事があったので。

http://www.sankeibiz.jp/business/news/120330/bsj1203300821001-n1.htm
これだけだと電子書籍が「進む」のか「進んでない」のかわからないので、記事中の「出版デジタル機構」を探してみると準備ページがありました。

http://www.shuppan-d.info/
ここに出版デジタル機構の目的、活動内容が書かれています。

http://www.shuppan-d.info/2011/09/001.html
「ソースを読んでください」って書いてもどうせ読まないのは重々わかってるから「目的および目標」と「業務内容」をコピペ。
(問題あれば削除します)

1「出版デジタル機構」の目的および目標
・国内における電子出版ビジネスの公共的インフラを整備することで、市場拡大を図る。
・日本の電子出版物の国際競争力を強化する。
・研究・教育・教養分野における電子出版物利用環境を整備する。
・現在または将来の利益逸失を防ぎ、出版界全体の成長に貢献する。
・国内で出版されたあらゆる出版物の全文検索を可能にする。
・本機構は各出版社等からの出資を受け、収益化を目指す。

2同・基本業務内容
・「出版デジタル機構」(以下、「本機構」)参加各社の出版物デジタルデータの保管業務を行う。
・対図書館ビジネス(BtoP)を各社に代わって本機構が代行する。
国立国会図書館が電子化をおこなった雑誌・書籍の民間活用の担い手となる。
・各電子書店・プラットフォーマーに向けての配信業務(BtoB)を支援する。
・各社の希望に応じて出版物の電子化を行う。
・各社の著作権者への収益分配を支援する。
・電子出版物に関する検討事項を討議し、解決する場を提供する。

うむ、やっぱりソースはわかりやすくてよい。
バカな自分の頭で考えるに出版デジタル機構の大きな仕事はこれらかな?
1.データ化された電子書籍の保存をするぜぇ。
2.国立図書館のデータも俺らが使っちゃうぜぇ。
3.電子書籍配信業者とのビジネス化の手助けをするぜぇ。


でね、これだけ読んでると「あぁ、やっと電子書籍が動き出すのか」って感じですが、何かお忘れじゃないですか?
そう、「作者の立場」がすっぽり抜け落ちてるんですね。
「出版社の立場」はかなり熱く書いてあるんですが、「作者の立場」はかなり抜け落ちてます。
2に「各社の著作権者への収益分配を支援する」って書いてますが、書籍が電子書籍化された場合の出版社と作者との立場はどうなってるのかが問題。
バカな自分の頭で考えると、上の条項、出版物原盤権を想定してるような気がするのですが、頭のいい人、どんなもんでしょう?

  • 出版社に原盤権を…業界、法整備目指す (読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20120329-OYT1T00724.htm
出版物原盤権については解釈が色々され、議論になってますが、出版デジタル機構の収益分配ってこっちにありそうな?
(出版物原盤権について書くとちょっとずれるので項をあらためて)
なんかいっときどこかの出版社が作者に契約の見直しを持ちかけて、作者じゃなく出版社に出版権と著作権があるような契約を迫ったって話もちらほら見たし。
そこんところどうなんでしょうねぇ?


何が書きたかったかというと、昨日のエントリーも含めて「出版社と作者の関係」が電子書籍だといまいちわかりにくいなと。
作品の著作権はあくまで作者にあるのであり、出版社はその作品を刷って本という形にして出してるだけで著作権者でもなんでもない。
なのに出版デジタル機構では出版社に著作権があるような(僕の解釈では)前提でことをすすめている。
何か不思議だなぁと。
作者の立場がまったく見えてこないというか。
たとえば「デジタルの解像度はまだまだだから、自分の作品は電子書籍という形にしたくない」という作者がいたら、その作者の作品はどうするのだろう? とかね。
作者側に立った話が見えてこないので何とも。
出版社と契約してらっしゃる作者のかたって、その辺の諸々の問題は解決して何も問題なく満足されてるのなら、このエントリーはチンピラが難癖つけてるだけのクソ文章なのですが。


僕は「作者が儲からない」電子書籍化は反対です。


今はTwitterとかでつぶやいてるマンガ家さんや作家さんも大勢いらっしゃるので、「電子書籍の正直なところ、私は儲かるのか儲からないのか?」をつぶやいていただけたらなぁ、なんて思います。