書籍と電子書籍、実入りが良いのはどちらですか?

最近「待つ」という仕事が多く、5時間待って10分作業とか、6時間待って5分作業とか、そういう待ち時間がありまして。
そういう時間で「電子書籍はなぜ普及しないのか?」といった趣旨のブログのエントリーやTwitterのツイートを見たりしてまして。
「そうかなぁ? コミックに関して言えばebook japanが頑張ってるし、あとはその人のライフスタイルが紙に向いてるか電子書籍に向いてるかだけじゃないの?」と思いまして。
んで、初代iPadを購入したときに色々入れて、まったく使ってなかった電子書籍アプリをいくつか見てみたのですね。
そうするとどのアプリもかなり充実してきてる。
特に紀伊国屋のアプリの商品の充実に感動。
「ほー、こういう本を売ってるんだぁ」とつらつらと眺めるのはまさに本屋を徘徊している感覚。
もちろん作品名や作者名でずばり検索することもできますが、なんというか新鮮な驚きで物欲を抑えるのに必死でした。


でね、紀伊国屋アプリを見てるときにふと気になりまして。
たとえば寺沢大介氏の『喰いタン』。
書籍でも在庫がありそうな16巻、紀伊国屋アプリでは1冊600円ですが、ebook japanだと525円。しかも5%ポイントバック。
AMAZONでは590円。
他の作品で見ると、ゆうきまさみ氏の『機動警察パトレイバー』。
小学館の専用アプリだと450円。ebook japanだと420円。これも4%ポイントバック。
で、もし単行本を「新品」で書籍で買ったらいくらなのだろう?


ここでふと思いませんか?
本には再販制度というものがあり、どこで買っても同一の価格が適用されます。

  • 再販制度(再販売価格維持制度)とは (お金の百科事典)

http://homepage3.nifty.com/bom-money/houritu/
ということはおかしくないですか?
電子書籍だけは買う場所が変われば値段はバラバラ。
調べて見ると2010年に公取委電子書籍再販制度の対象から外していたんですね。

http://blogos.com/article/11499/

http://www.jftc.go.jp/dk/qa/#Q14
なんだ、もう2年も前にそうなってたのか。
電子書籍にブチブチ文句を言ってましたが知らなかったです。
だから買う場所によって値段が変わるのか。


そうすると思うところがふたつ。
ひとつは電子書籍販売業者が複数あった場合に価格競争が起こるんじゃないかということ。
もうひとつは電子書籍が売れたら、作者の方にはどれだけ実入りがあるんだろう? ということ。


アプリの性能で差をつけることは出来ると思いますが、同一のマンガ作品ならやっぱり値段が安いところで買いたくなるもの。
で、今は出版社や取次、印刷所、本屋、電通なんかが電子書籍に参入していて、意外と同じ作品を売ってたりしてます。
しかも調べてみれば値段はバラバラ。
ということは値段競争が生まれる土壌はあるわけで、これが進むのならそのうち電子書籍の高いハードルのひとつ、値段も改善されるんじゃないかしら?


で、もうひとつのこっちの方が実は重大で、電子書籍が売れたら作者にはどれだけ実入りがあるんだろうか? と。
たとえばの例を出して申し訳ないけど、ebook japanと出版社、作者との契約はどうなってるんだろうか? と。
というのもですね、最近講談社とかが電子書籍に力を入れてまして、ebook japanでの新刊の出るスピードが早くなってまして。
土山しげる先生の『邪道』2巻(日本文芸社ですが)なんて3月8日に書籍版が発売されたのに、速攻で同じ3月にebook japanで発売されてるんだもん。
書籍版買った自分、涙目ですよ。


でね、そこでふと思ったのは、もしこれから電子書籍が値段と発行スピードの争いになり、書籍版の数週間後に電子書籍版が出るようになれば、自分はそっちを買いたい。
だけど電子書籍が売れても書籍版より作者の実入りが少ないなら書籍版を買います。


寝言言ってるんじゃねぇ! と思われるかもしれませんが、再販制度が無く、他業種参入してるいま、将来的には価格競争と発行スピード競争になるときが来るかもしれないかもしれないなんて考えるわけで。
そのとき、作家さんはどっちの方が儲かるのか? と思ってこの記事を書いてみました。


願わくばこの記事がどなたかの目について「いま電子書籍が1冊売れたらこれぐらいで、書籍と比べるとどっちが儲かる」なんていうガチな意見に結びつけばとっても嬉しいな、なんて。


<PS>
電子書籍再販制度から外れてるという部分が意外と影響が大きいかも。
「この作品は何週間か先に必ず電子書籍で発行される。しかも紙より安い。全巻買っても置き場所に困らないし、劣化もしない」なんていうふうになれば、意外と紙媒体をあっさりと駆逐してしまうかも。
逆に電子書籍を売ってる側が「この作品はこの時期までに必ず電子書籍化します」なんて言っちゃえば、そして紙より値段が安ければあっさりと勝負つきそう。
いろいろ複雑なバランスはありますが、再販制度が適用されないってのは影響が大きそうだなぁ。
講談社電子書籍に力を入れだしたのもこの辺が影響してるのかも。


PS2
AMAZONとかの影響で町の本屋がバタバタ潰れてるということは、出版社の本を売るチャンネルが減ってるということで。
そうなったら取次とか本屋のことなんか考えてられないわなぁという部分も電子書籍化を推してるのかも。


PS3
このエントリーはコミックを念頭に書いたもので、学術書とかは知らない。