『新参者』

本を読んだ感想とか適当に。

新参者

新参者

初出が「小説現代2004年8月号」で完結編が「小説現代2009年7月号」と、訥々と語り継ぐオムニバス・スタイルの作品にしてはめずらしい作品。
2005年から2008年までがスッパリ抜け落ちてるんですがね。
これだけ時間が開いてるのに当初の目的地に着地させた手腕はさすが。


本格ミステリーとかそういうのではなくて、一見、雑事の解決の積み上げにしか見えないトリビア的謎解きな作品。
でも。雑事の積み上げにこそミステリーの鍵があり、その雑事の解決が犯人の追及に連なっていくという。
さらにその犯人の…真犯人の…犯行動機を…解き明かさせる…のは……。


誰〜が殺したクックロ〜ビン☆


練りに練った伏線を「よいしょっ!!」とばかりに巻き上げる剛腕は健在なのでしょうね、東野氏には。


この作品はミステリーの基本を思い浮かべさせてくれる作品だと自分は思います。
センセーショナルな残虐な死とか、思いも寄らない超科学の病原体とか、そういうのはナイですから。




ある人が困った、だから殺した。




…その、なぜある人がそう殺さなければいけなかったのか。
それがこの作品には書かれてるのでミステリー初心者にはピッタリだと思います。




<PS>


んでさ、オイラは思うんだけどさ?
スプラッタな猟奇的殺人を"ミステリー"と、"ミステリーの傑作"と取り上げるのはやめてくれないかと。
ラノベなんかはこういうので評価を競い合ってるでしょ?
どれだけ異常者が猟奇的殺人をするか!?って。

一人しか死んでいない。
でも、その回りに心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。
そういう被害者を救う手だてを探しだすのも、刑事の役目です。


今の文芸界、人が死んだ数が傑作への評価になってませんか?