簡単に見える裏側。

自分のいる業界、CADを使う業界なのですね。
CADってのは図面を描くパソコンソフトです。
で、業界が繁忙期に入ると自分なんかもCADで図面を描いたりするわけです。
お手伝いで。
自分の本職を別にやりながらの兼業での作業。
これがなかなかきつい。


で、そうやってCADで図面を描いてるときにされた、こういう依頼の言葉。

「図面作成、簡単だからやっといて」

「簡単だったらお前がやれや!!」ってキレそうになりました。
…切羽詰まってたんだな、おいら。反省、反省。


その依頼者にとっては「あなたのスキルを持ってすればこの仕事は簡単だと思いますので対応をお願いします」っていう言葉…、なわけないわな。
「パソコンは魔法の箱だから、こんな作業簡単でしょ?」ってな感じなんじゃないかな。


なんというか、パソコンにあまり詳しくない人ほどパソコンでの作業を簡単に考えてると思います。
CADとか映像の編集とか。
でもね、CADなんて使い方教室とか専門学校とかがあるくらい、習熟度を要求されるソフトなんですよ。
自分も仕事で何度も使ってるから使い方が身に付いたわけで。
映像の編集も自分でやってみればわかるけど、すごくやっかいなんですよね。編集専門のショップがあるくらいだし。
何度も何度もソフトを使ってみて、やっと見られるものが出来るという。
つまり「作業のスキル=習熟度」なわけです。


でも、習熟度を高めるために費やしてきた手間や時間はその依頼者にはわかんないと思うんですよ。
とくにパソコンに詳しくない人には。
「なんか簡単そうに作業してるから、俺にはわかんないけど君には簡単なんじゃないの?」って。
それがさっき書いた「簡単だからやっといて」って言葉に繋がるんじゃないかなぁ。
だけど、習熟度を高めるために手間や時間を費やしてきたこちらとしては、「簡単だからやっといて」という言葉で自分の積み上げてきたモノを崩された気がするんですよね。
「簡単だって言うんなら、こちらが積み上げてきた手間や時間をそっちも費やしてみろや!!」って。


「簡単だからやっといて」っていう言葉にはいろんな意味があるんだとは思います。
作業してもらう優先順位を早くしてもらうためとか、相手に作業の苦労を実感させたくないとか、いろいろな意味が。
でも、相手がせっぱ詰まってるときにかける言葉としては選択が間違ってるんじゃないかなぁ。
特にパソコン作業でせっぱ詰まってる相手には。


作業を効率よくおこなえるようになるために積み上げてきた手間や時間というものが、パソコンでは見えにくくなってるような気がします。
パソコンは魔法の箱でもなんでもなく、ただの道具です。
道具を使うにはそれなりの練習が必要です。
パソコンで作業できる人間はそれなりの練習をし、努力してきたから作業できるようになっているのです。
そのことを忘れずに、あまり無理な仕事の依頼はやめて、優しい言葉をかけていただければ、と思います。