『オタク論!』

というわけで、またもや読んだ本のことを。

オタク論!

オタク論!

この本に付いてるオビにはこう書かれています。
「オタク第一世代が語る『オタクって何だ!』」
ですが、結局この本を読んでも結論は「やっぱりオタクってわからない」だと思います。
というのもこの本で定義してるオタクってのはオタク第一世代の定規で定義されてるから。
どう考えても現在進行形のオタクの定義ではないんですよね。


この本の中ではオタクのフロントライン、最前線は14歳だと言われてるのですが、そのフロントラインの分析がまったくないんですよ。
今の14歳がどういうオタク的な生活を送っているのか、その分析や統計、あるいはフィールドワーク的アプローチはありません。
かろうじて浮き上がってくる姿はすでにマスコミや出版社による「萌え」というフィルターがかかっているので、「オタク=萌え」を加速するだけの資料にすぎません。
だから岡田・唐沢両氏とも最前線で何が起こってるのかはわかっていないと思うのです。


さらに言えば、岡田・唐沢両氏が話す「オタクの老後」を考えると、彼ら、最前線の人間が密接に関係してきます。
岡田・唐沢両氏が60歳を迎える頃、オタク的創作の現場に立ってるのは2007年に14歳であった彼らです。
そうであるなら彼らがオタクの自我を形成する十代に何があり、何が影響を与えたかを考える必要があると思うのです。
これは老後の年金問題を考えるのと同じ。


いま、年金をもらってる人ってのは銀行の預金のように、自分が積み立てたお金をそのままもらってるんじゃないですよね。
現在年金を負担してる層から年金は拠出されています。
それと同じで、いくら老後になってもオタクは「ガンダム」や「セーラームーン」といった過去作品だけでオタク趣味を続けていけるわけではありません。
それなりに現在進行形で進んでる作品も興味の対象として必要です。
ということは、今の若者がオタクの老後を支えることが出来るかどうか、人材が育っているかどうかも考える必要があるのではないでしょうか。


そういう人材育成的なアプローチで「オタクって何だ!」と考えてみるのもひとつのオタク分析の手法だと自分は思います。
「オタクの育ち方」ね。
育ち方がわかれば、何がオタクを形成するのかも見えてくるはずだから。
そうでないと漠然と「オタクとは〜」なんて語っても、結局第一世代のノスタルジーを満足させ、「今の若い者は〜」なんて言わせるだけだと思います。


んで、岡田・唐沢両氏が歯切れが悪いなぁと思ったのは、本来オタクってそういう十代に何らかのオタク文化の直撃を受けてると思うんですよね。
第一世代ならヤマト、第二世代ならガンダムとかね。
でも今の第三世代にはそういったものがないんじゃないかなぁと。
そういう部分もオタクのフロントラインを語りにくくしてる、見えにくくしてる原因なんじゃないかなぁ。
「オタク第三世代、フロントラインが語る『オタクって何だ!』」ってのが出てきて始めてオタクの姿が見えてくるんじゃないかと自分は思ったり。
ただ、オタク第三世代が語るオタクの姿ってのは第一・第二世代の老後にとってはとんでもないことになってそうですが(笑)。


自分はそろそろ岡田・唐沢両氏が定義するオタクの姿が古典化しつつあるんじゃないかなぁとこの本を読んで感じました。