新聞紙はなくなっても新聞はなくならない。

『新聞社 破綻したビジネスモデル』の続き。
河内氏の「調査報道やスクープで、専門記者集団が活躍する分野は残る」という意見に自分も賛成。


よくネットのヘビーユーザーが「新聞はなくなり、情報はネットで得る時代になる」と言いますが、実際なくなるのは紙媒体としての新聞紙なんですよね。
新聞の機能が紙からネットに移るだけ。
いや、今や公的サイトや個人ブログで情報を得ることが出来るから、新聞自体もなくなるという人もいますが、自分はそれには甚だ疑問。
というのも情報を記事として発信するにはその情報の裏付けを取らなければいけないですよね。
いわゆる取材と検証です。
これがないとその情報が事実かどうか、間違いがないかどうかわかりません。
この取材や検証を個人でやるにはコストと時間がかかりすぎるのです。
普通の生活を送ってる人が仕事の片手間でやるのは無理。
だからここにプロの仕事としての需要があるのです。
このプロの仕事としての需要は、紙がなくなってネットだけになってもなくならないと思います。


この『新聞社〜』の中で河内氏はすでに紙媒体の新聞は生き残れないとして、専売所制度の廃止や宅配の委託などを考えていて、紙媒体の維持には消極的というか、見切りを付けてる感じ。
それに対し新聞機能の大部分をネットに移すことにはすごく積極的なんですよ。
自分も前の日記に書いたとおり、これ以上紙媒体・宅配制度を維持するのは物理的に無理なので、早くネットに移した方がいいと思ってましたし。


ただ、河内氏が言うように、朝日と讀賣のネット移行は無理。
この二紙は紙媒体での売上や広告費がスゴイから、ネットに移ると超減収になるので。
ある意味、経営的にジリ貧の毎日だけがそれを出来ると河内氏は言いますが、自分もそう思います。


毎日の記事は、良く言えばリベラル。悪く言えばダッチロールと呼ばれるぐらい記事が右に行ったり左に行ったりするのですが、それが出来るぐらいわりと思考が柔軟な新聞なんですよ。どこかのジャーナリスト宣言凍結新聞や日刊渡辺恒雄と比べれば。
さらに二社がトップシェアを取り、あとはそれ以下という業界なので、そんなにあくせくして記事を書いたり売ったりしなくていいし。
(毎日が新聞社や販売所を含め「ぬるま湯」と言われるのはそのため。毎日はトップシェアなんて野望を持ってないですから(笑))


河内氏の計画を押し進めていれば、画期的なネット新聞が出来上がっていたと自分は思うのですけれども。
新聞のこれからを考えたい人にはおすすめの一冊だと思います。