『電波利権』

今日の一冊。

電波利権 (新潮新書)
自分が常々この日記で書いてる「なぜ26インチぐらいでフルハイビジョンのテレビが出ないのか?」とか「なぜ地上デジタルの単体チューナーが発売されないのか?」という疑問に答えてくれた本。


まず、なぜ26インチぐらいでフルスペックハイビジョンテレビ(画素数1920×1080)が発売されないのか?

多くの視聴者を集めて、普通のテレビの上下を切って横長にした映像と、同じ画面のHDTVを並べてブラインド・テストを行うと、20インチ前後では、ほとんどの人に見分けがつかなかった。30インチを超えると、半分ぐらいの人が見分けられるようになり、40インチぐらいの大型スクリーンになると全員がわかるようになる。

見分けがつかないのなら23〜26インチという普及帯に高額なフルスペックハイビジョンを投入する必要はないわけです。
23〜26インチといった普及帯には高額なフルスペックを使わなくとも十分。
高額なフルスペックを使わないことで価格を抑えることも出来ます。


なんだ、技術的に出来ないんじゃなくて、やっても仕方ないからやらないのか。
すごく納得。
メーカーが大画面テレビにチカラを入れてる理由も頷けますね。
だって「大画面でないと見分けがつかない」んだもん。


もうひとつの、なぜ地上デジタルの単体チューナーが出ないのかという疑問。
これは2005年までの統計ペースでデジタルチューナー搭載テレビの普及が進むと、2011年のアナログ停波のときには全国1億3千万台のテレビのうち1億台近くのテレビがアナログのまま残ることになります。
そんな状態でアナログ停波なんかしたら1億台近いテレビがすべて粗大ゴミと化し、視聴者はパニックになるでしょう。
他にもアナアナ変換の問題もあって2011年にアナログ停波は無理。2016年ぐらいまでアナログ放送は延長されるんじゃないかという見込みです。
そしてデジタルチューナー搭載機の普及が進まなければ、国費でアナデジコンバーターを配ることも検討されるのではないかという予測もあります。


そう考えると単体チューナーを発売しても無駄なわけです。
どうせ2011年にはアナログ停波なんて出来っこない。
それなら地デジチューナーを搭載しないことで価格を抑え、競争力のある製品を作った方がマシ。
国費でアナデジコンバーターを配ることになるのなら、地デジチューナーなんて元々付けなくてもいいでしょ? と。
自腹でカネを出してチューナー搭載機を買った人と、国費で配られた人のあいだに格差が生じて、それはそれで大問題になりますから。
これもすごく納得。
こっちも技術的に出来ないんじゃなくて、やっても仕方ないからやらないのね。


やっても仕方ないからやらないっていうのが技術屋的な考え方で自分はすごく納得出来たなぁ。
その分、今年の春に地デジチューナー搭載テレビへの買い換えを考えてたけれど、買い換える気はなくなったなぁ。


フルスペックと地デジの疑問はとけたけれど、ひとつ疑問が生まれました。


いまテレビ放送に使ってるVHF帯を電気通信事業者に明け渡し、電波の適正利用を促すというのが地デジ移行の理由のひとつですが、果たしてVHF帯が欲しい事業者なんているんですかね?
この本の「電波とは何か」という項を読んでいてそう思ったのですが。
この辺もちょっと調べてみないといけないですね。