『地獄のババぬき』

bolt692005-01-22

はい、というわけで松屋町まで雛人形を見に行ってました。
触って遊べるものって案外少ないんですね。あっても桁違いの値段で逆に触れなかったり。


今日読んだ一冊。
『地獄のババぬき』(著:上甲宣之、発行:講談社


面白かったので一晩で読了。最初から最後までハイスピードで飛ばしてるので途中で読むのを止められないんですよ。


内容はハイジャックされたバスの中で生き残りをかけてババぬきで戦い、最後までババぬきの場に残った人間が爆殺されるという突拍子もないもの。
そのババぬきに挑むのが海千山千の強者たちで、己の得意技を駆使し、トリックと心理戦で勝ち抜けを狙っていく。この駆け引きがすごく面白い。


自分はミステリーのキモは「逃げ道を塞ぐ」ことだと思うんですよ。
ミステリーの主役に探偵や刑事がよく登場するのは、彼らが降りかかってきた謎から職業的に逃げられないからなんですね。職業的に立ち向かわねばならない。
だけど一般人が主役の場合、降りかかってきた謎になぜ立ち向かわなければいけないのか、その動機付けが必要なんですね。そのためには主人公が謎に立ち向かわなければいけないように逃げ道を塞ぐ必要がある。この逃げ道がしっかり塞がってないと登場人物たちの行動原理に破綻が出る。


これは作中のストーリーやトリックも同じで、「なぜそうなったのか」のためにその他の可能性を潰しておかないといけない。
この作品でも「なぜババぬきで戦わなければいけないのか?」のために、考えられる可能性を潰している。そうなると主人公たちは「ババぬきで戦わざるを得ない」状況になるわけです。道はそっちにしか開いてないのだから。
逃げ道を塞ぐ、これがしっかり出来てないと物語の穴になってしまい、ストーリーもトリックも破綻してしまう。
この『地獄のババぬき』では登場人物たちをババぬきで戦わせるために丁寧に逃げ道を塞いでいるんです。だからどうすれば主人公たちがピンチの境遇から脱出できるか、ハラハラして読んじゃうというわけなんですね。


随所にピンチ脱出のための伏線が散りばめられていて、それが大逆転に繋がるので読んでて面白い。今は伏線を回収しながら二回目を読み返してます。


あ、この作品、どっしりしたミステリーをお好みの方にはあまりおすすめしません。
どっちかというとコミック風の軽い作品ですので。


地獄のババぬき 『このミス』大賞シリーズ