『大阪破産』

読了したので感想などを。

  • 『大阪破産』(著:吉富有治、発行:光文社)

大阪破産 Osaka Bankrupts (光文社ペーパーバックス)
センセーショナルなタイトルの本ですが、大阪市・府の内部暴露や糾弾ではなく、いま大阪市はこういう状態にありますよというのをデータを元に検証した一冊。
だから市と闇組織の繋がりなど内部暴露を期待して買うと裏切られます。
逆に暴露無しなんですが大阪市の現状をデータで示されるととても生々しくて暗澹たる思いになります。


第4章で各種財務表を元に大阪市の現在を診断していて、それによると大阪市は危険水域にすでに入っているのですが、まだ何とかしようと思えば出来る段階。
まだ十分に間に合う状態。
病人に例えてみると、ガン患者。
ガンなんですが、患者が手術に耐えられる体力のあるうちにすべての病巣を取り除き、転移を防げば何とか持ち直すんじゃないかという状態。
しかし手術は怖いからと高価な痛み止めを打ち続けて手術をしないでいると全身に転移してジ・エンド。その頃ようやく手術を決意しても、もう患者が手術に耐えられる体力は残っていないのですが。


この本はそのガンの診断書みたいな本。
こことここにガンがあります。このガンの原因はこれです。ほっておくとこういうリスクがあります。対処法はこれがあります、と書き記した一冊。
そして「職員も市民も痛みをともなう手術を今しますか? それとも全身に転移して対処できなくなるまで問題を先送りしますか?」というのを突き付ける一冊でもあります。
そう考えると先日の市長選は大きな分岐点だったのだなぁとあらためて思います。
今ではもう手遅れな感じをひしひしと感じますが。


で、自分がなぜ大阪市のことをとやかく書くかというと、破綻後の大阪を予想して書かれた第1章「未来シミュレーション・大阪底なし沼」を読めばおわかりいただけるかと思います。
公共サービスを提供できなくなった自治体がどれだけ悲惨で迷惑なのかよくわかります。
大阪市が破綻すると周辺自治体にかかる迷惑がとても大きいのです。
すでに大阪市だけの問題じゃなくなってるのですね。だから大阪市に目を光らせてとやかく書いているのです。


まだ手術すれば間に合うという勇気をもたらしてくれる本でもあるので、職員の方はぜひ読まれてはいかがですか?
その時の購入費は公費じゃなく自分のおカネでね。
自分でおカネを出して買ったものは大切にするでしょ?
大阪市職員に欠けてるのはその意識だと思いますよ。


追記
大阪市職員の市内居住率は約4割。
そりゃ「自分のおカネ」意識が持てなくて当然ですよね(笑)。