新聞屋残酷物語。

今日3日放送の『ムハハnoたかじん』でこういう話題が。
面白かったので抜粋。

  • インターネットがここまで普及する時代、新聞は必要ですか?

速報性はテレビに絶対勝てない。広範囲性でもインターネットに勝てるはずがない。
ほな、なんやねん!? と。
そこに一般のご家庭の方々が新聞を取る意義、意味合いってのは?
やしきたかじん

じゃあ新聞の特徴というのは何かというと、ちゃんと調査報道をやんなきゃいけないんですよね。
それを記者クラブの発表で、あるいは国土交通省が発表したことをそのまま鵜呑みで発表してるんじゃダメで。
調査報道というのはデータをキチンと調べて出していくことが新聞の役割なので、速報性はテレビに負けるのはわかってるんだから、もっときちんと自分で調査しなさいよ。
猪瀬直樹

事実を伝えるだけだったらそらもうインターネットの方が上ですよ。
ジャーナリズムという活字の場合は調査して暴露してくれることを期待してるわけで。今の新聞は全然そんなことないですよね。
橋下徹

僕が道路公団の問題をやったとき、会議を公開して新しい資料もどんどん出すんだけど、全然載せない。
そして記者クラブでもらってきたものを書くという体質があるね。
猪瀬直樹


新聞のニュースとネットのニュースの大きな違いは、情報の裏取りをしてるかしてないかだと思う。
ネットのニュースは基本的に裏取りをしてないし、誤報があっても情報元の記事通り「誤報でした」と書くだけ。
ウチの「共同通信飛ばし記事」も裏取りをしてきた人はひとりもいなかったし。


それに対し新聞の記事は裏取りのはっきりしない記事は……最近載せてるなぁ(笑)。
日本兵生存の記事とか。レッサーパンダが立った記事とか。
あれも裏取りをきっちりしてれば記事じゃなく恥をかく必要もなかったのに。
レッサーパンダってちょっと調べれば立つのが当たり前の動物だってわかったのにね。
日本兵生存の記事を最初に流したマスコミはどこだったんだろう?


その辺ジャーナリズムの質は赤丸急下降中で暴落中だ。
たかじんの言うとおり「マスコミ人は襟を正さなければいかん」だろう。


で、自分は冒頭の質問は「必要だと思うけど、生き残るのは難しい」と答えるかなぁ。
新聞が今のように情報を右から左に流してるだけでは生き残っていけないと思う。
あるいは感動話を創作してるようじゃダメでしょう。「あの○○事件で被害にあった家族の涙の訴え!!」みたいなヤツね。


自分が考える、新聞が生き残る条件は、新聞をジャンルごとに細分化して縮小し、専門分野で先鋭的にしていくことだと思う。
調査報道もそのひとつですね。


新聞の値段の話ですが、皆さんが払ってる月々の新聞代の中には新聞配達店の取り分は含まれてません。
新聞に挟まってる折り込み広告が配達店の主な収入なんですね。
皆さんから集金したおカネはどうなるかというと、配達店が新聞社から新聞を買うのに使ってるわけです。
そう、新聞社は皆さんに新聞を売ってるんじゃなく、配達店に売ってるのです。


配達店が1,000件お客さんを持ってると、新聞社は1,200〜1,600部を配達店に売ります。
配達店は1,000件しかお客を持っていないので1,000部だけ買いたいのだけど売ってくれません。余剰分をかならず付けてきます。
配達店はその余剰分もおカネを支払わなければいけないのですね。


じゃあ利益を出すためには実売と余剰との差を詰めればいいのだから、配達店は必死に拡張をします。
しかし拡張して1,600件に近づけると、次は2,000部送ってきます。
2,000になったものを1,600にはなかなか戻してくれません。


集金したおカネで新聞を買うのだから、未収が出ると新聞屋は大慌てです。
とにかく集金してこい!! となります。
朝・昼・晩、晴れの日・風の日・雨の日、集金は必死です。
しかも在宅率は雨の日が一番高いので、未収が出ると雨の日にカッパ着てお百度参りなんてこともあります。


新聞屋が必死に拡張・集金する理由、少しおわかりいただけたでしょうか。


ちょっと書いていいのかわかりませんが、よく「今新聞取ってくれたら三ヶ月タダにしておくよ」なんて話がありますが、これ、上記の理由だからできるのですね。
配達店は元々そのぶんを払ってるわけです。だから三ヶ月タダで乗り切りさえすれば、その後はおカネになるのなら…って手段です。


これも書いていいのだろうか?
よく新聞を取るときにつけてくれる景品……やっぱり、これ、書けないなぁ。


新聞屋残酷物語が書けるほど色々新聞屋で経験を積んできた自分から言うと、新聞の収入システムがすでに破綻しちゃってるわけです。
テレビがHDDレコーダーで破綻するようにね。


昔は28ページの朝刊ってのがときどきあって、すごく軽いから配達する方はとても嬉しいんですね。
「今日何ページ?」「28ページ」「やったぁ!!」てなもんです。
しかし今はほとんど朝刊36ページですよね。これが重い、重いっ!!
たかが8ページと思うかもしれませんが、これを100部も200部も、さらにチラシを入れて運ぶわけですから、たかが8ページ、されど8ページです。
「今日何ページ?」「36ページ」「あー、今日いつものところに中継よろしく」ってな感じでげんなり。


で、苦労して配達した36ページの朝刊を見ると半数以上、日によっては四分の三ちかくが広告。
そう、新聞社も新聞を売ったおカネだけではやっていけないわけです。


…だからスポンサーの不利益になる記事は書けないので…裏取りもせず、スポンサーの顔色をうかがうようになるわけです。


でねー、この辺も面白い話いっぱいあるんですが、現役新聞記者の方のブログを読むと面白いかも。
理想と現実のギャップに打ちのめされてるんですよ、彼らも。


あと自分が現役新聞屋だったころの話。
皆さん大好きA新聞。
これがなぜ売れてたか、その理由知ってます?


答え「高校・大学受験で天声人語から出題されることが多いから」


でした。
実際に自分が通ってた学校でも「天声人語から出題されることが多いから」という理由で教師が購読をすすめてました。
A新聞と日教組……、ね? 面白いでしょ?(笑)


新聞屋時代の面白い話、山ほどあるのでそのうちまとめて書きたいなぁ。