『美鳥の日々』8巻(最終巻)

(作:井上和郎、発行:小学館


ラブストーリーにはハッピーエンドがよく似合う。
登場人物がそれぞれ成長していく姿は清々しく、青春のほろ苦さと甘さを感じさせます。
マンガの設定が設定だっただけにどうなることかと思いましたが、終わってみれば王道を行く学園ラブコメだったと思います。


この話、ドタバタラブコメディで続けようと思えばどこまでも続けられたと思うんですよ。
でも8巻でキチンとエンディングまで描いてみせ、スッパリ終わる潔さはお見事。
物足りないかもしれませんが、ジャンプ式で延命措置を図り、ズルズルと続くよりはいいんじゃないでしょうか。


最初、サンデーでこのマンガの連載が始まったとき、はっきり言ってバカにしてました。
「また萌え狙いの一発屋かよ」とか「右手が恋人って…また直接的な」とか。
でも単行本を読んでみてその認識をあらためました。
「……面白いやん」って。


もちろんコメディとしても面白いのだけど、「恋人って何だろう?」っていうテーマで物語を俯瞰して見ると、それぞれのキャラクターにキチンとテーマが見える。
右手が恋人というのにもテーマがあって、それは最終巻でちゃんとドラマティックに回収されている。
表層的な萌えの下にちゃんとストーリーのあるマンガなのですね。
だから読んでて面白い。


割と古い演出が多いし、80〜90年代のムーブが多かったのも自分が面白いと思った原因のひとつかも。
バンドブームの頃に青春時代を送った人ならこの世界観にハマるかもしれないです。