『手塚治虫のマンガの描き方』

今日は読んだ本のことを書こうかなと。

マンガの描き方―似顔絵から長編まで (知恵の森文庫)

マンガの描き方―似顔絵から長編まで (知恵の森文庫)

読んだのは電子書籍版だったのでそちらはこちらでどうぞ。

http://www.ebookjapan.jp/ebj/book/60074665.html


内容はプロ向けというより「気軽にマンガを描いてみましょう」という初心者向けのマンガの描き方の講座。
なんせ

この本は、いわゆるマンガ家の卵とか、マンガグループとか、マニアが見ると、きっとものたりなくて全然つまらないだろう。

要は、男がコップをとったということが、わかりさえすればいいのである。

デッサンなんか知らなくったって、いっこうにさしつかえなく、また誰に怒られることもない。
ポーズが描けないという人の大半は、この人体デッサンにこだわっているのである。
(中略)
ひどく不自然な、不格好なポーズができても、おもしろければ、それで十分なのである。
「ひゃあ、こんなひどい格好になったぞ」と思えば、それで成功なのである。

まかり間違ってマンガでめしを食おうと思っている人へ

などなど、こんな調子で進んでいくので。
昭和52年に書かれた本なので、今やマンガ専門の道具があり、デジタル作画が多くなってきた現在にはそぐわないことも多いし。
カラス口が買えなくてマンガ家になることを諦めた人なんてもういないだろうし。
この本はマンガの歴史書として読むのが正しいんじゃないかな? と思います。


それで歴史書として読むとこういうところが気になりまして。
それはこれ。

ヤングのあいだではマンガを描き、見せあうことで、心のふれあいや交友のきっかけにしようとする人たちが増えている。
マンガファン大会なんていうものがあって何百人とヤングが集まることがあるが、その会場でなによりも重要な目的は、マンガを通じて全国の未知の同世代と交流することだそうである。

このごろマンガ同人誌が流行るけれど、それにも中途で途切れた作品が、やたら載っている。
ご丁寧に「続く」と書いてあって、もっと丁寧なのは、横に、「さて、これからどうなるのでしょう。たのしみにお待ちください。バイバイ!」なんて文句が添えてある。
雑誌顔負けだ。

同人誌に関してはその昔からあった(今の「同人誌」とは少し意味が違うけど、藤子不二雄の両先生も同人誌を作っていた)からいいとして、上で書かれてることってコミケのことなんじゃないかしら? と。
コミックマーケットが開催されたのは1975年の12月。この本が出版されたのが1977年の5月。
本の執筆時間を考えると、手塚先生はかなり早い時期にコミケのことを知っていたのか。それともこの当時にはコミケのような同人誌即売会がいくつかあったのか。
それで調べてみると1970年代にはすでに色々な同人誌即売会があったようです。

  • 1970年代の資料 (早坂未紀の世界)

http://www.geocities.jp/azicon1/1970_S.html
それでこの本でも同人誌と即売会について触れられてるのかと。納得。
70年代にはすでに大御所だった手塚先生が同人誌やそのまわりの環境についても目を向けて、そのことについても書いていたことにビックリですよね。
同人誌を取り巻く環境なんて今と違って些細なものだっただろうし。
まさに「マンガの神様」だなぁと。


他にも最近の児ポ法にからむような表現規制についても書いてあったり、マンガを描くうえで絶対に守らなければいけないことについても触れられてます。
その言葉はマンガやアニメがクール・ジャパンともてはやされるようになったいま、もう一度見直すべきなんじゃないかなぁと思います。
それについて書かれてるブログがあったのでご紹介。

  • 手塚治虫『マンガの描き方』 (蟹亭奇譚)

http://d.hatena.ne.jp/kanimaster/20100429/1272470913
是非ともエントリーを読んでみてくださいな。


eBook Japanの手塚治虫全集にはこれ以外にも『漫画の奥義』『まんが専科』とかありますので、興味のあるかたは是非どうぞ。
ステマステマ(笑)。