『けいおん!』4巻を自炊してみて思うこと。

仕事もそれなりに忙しいのですが、あまりに忙しいとすべてを投げ捨てて別のことをやりたくなったりしませんか?
それが今日の自分。
しなきゃならないことはあるのですが現実逃避のため、アレをやりました。
アレとは「自炊」。
って言っても料理の方の自炊じゃなく、紙の書籍を電子書籍化する「自分でデータを吸い出して電子書籍を作る」方の自炊ね。
iPadで色々試してみたい時期なのですよ、はい。


材料は『けいおん!』4巻(著:かきふらい、発行:芳文社)。
使う道具は大きめのカッターナイフ、定規、厚紙、アイロン、段ボール(カットする際の下敷き)、フラットベッドスキャナー。
味付けは「Adobe Photoshop Elements6.0」と「Paint Shop Pro Ver4.0」。
細かい自炊方法は専門に解説してるページをごらんいただくとして、ここは「男の手料理」として大胆に作ろうじゃありませんか。


まずは厚紙を切り、A5のテンプレートを作ります。
これは本を切断するときに使い、ページの大きさをすべて揃えるために使います。


次にアイロンで本の背表紙を熱し(低温でOK)糊を溶かし、ガワから本体を外してしまいます。
あせって引っ張ると本体を痛めてしまうのでのんびりと、少しずつ「ペリッ、ペリッ」とはがしていきます。


剥がし終わったら数ページごとに分解し、先ほど作ったテンプレートをあて、糊面をカットしていきます。
ここも何十枚もいっぺんにカットするとページがよれたりしてしまうので、あせらず2〜3ページごとにカットします。
このとき表紙なんかもテンプレートをあてA5にカットしてしまいます。


カットし終わったら読み込む順番を決め、スキャナーで読みとっていきます。
カラーページはカラーで読み込み300dpi、白黒ページはグレースケール300dpi。
ファイル形式はjpg。
読み込みに使ったのは「Adobe Photoshop Elements」。
スキャナーで読み込んだ書面をカタログとして管理してくれる機能があったので。
フラットベッドスキャナーですので干物をあぶるように、じっくりじっくり両面読みとっていきます。


全部読みとれたら念のため「Paint Shop Pro」で1枚1枚チェック。
カットが甘くて出来た影やカラーページの修正をおこないます。


出来たらzipに圧縮し、iTunesを使って「ComicGlass」に送ります。
「ComicGlass」で最終チェックし、影の消し忘れなどがあったら再度「Paint Shop」で修正し、送り直して完成!
出来たのがこちら。






写真は適当に撮ったのでわかりにくいですが、念入りに修正したこともありほれぼれする出来映え。
これで作業時間は3時間!
もうやりたくねぇ〜、と思いましたが完成したものを見ると、またやってもいいかなぁ〜、とも思います。


作業のコツはカットを丁寧にすることだと思います。
カットさえ丁寧にやってればスキャン時に読みとった影の修正もしなくて済みますし。
ただ、「影の修正は結局パソコンでやるもんだ」と思ってれば修正も妥協がなくなるので、そこは手間暇をかけるかどうかなのかな。
自分は「自炊」って趣味は「あり」だと思います。


んで、話変わって。


こうやって自炊した作った電子書籍は単なる画像ファイルです。
ダウンロード作品にありがちなアクティべーションもありませんので簡単にファイル共有、いや、ファイル配布出来てしまいます。
(容量も小さいし)


その昔(今もあるけど)、「アニメ動画作成」ってのがパソコンの趣味のひとつにありまして。
これはテレビ放送されたアニメをビデオなどに録画し、それをキャプチャボードなどでパソコンに取り込んでゴーストやノイズを除去し、美麗なアニメ動画にするという趣味。
この「アニメ動画作成」ってものすごく高度な技術や機材が必要で、ある意味パソコンを使った趣味としては最上位の趣味でした。
で、この「アニメ動画作成」を趣味としている人たちって各々の技術を競い合うために自分が作ったファイルを交換しあってたのですね。


んで、自分が思ったのはこの「アニメ動画作成」みたいに「自炊」する人たちがファイルを交換しだしたらどうなるのだろうか? と。
ファイル容量を小さくし、美麗な自炊書籍を作り出す、それを趣味とする人たちが腕試しでSNSメッセンジャーでファイル交換しだしたらどうなるのか?
これって滅茶苦茶恐ろしいことじゃないでしょうか?
今はiPadを購入する人の方が少ないので、わざわざ「自炊」の美味しさを競い合う人はいないから済んでると思いますが。
もし自炊の美味しさに気付いた人たちが増えたら……。


そうなったら恐らく日本ではソフトやハードの「規制」という方向に話が進んでしまうと思いますが、自分はそうさせない方法がひとつだけあると思います。
それは自炊より美味しい電子書籍を提供すること。


なんだかんだ言っても自炊は手間暇がかかるので、出来ればやりたくないって人の方が多いでしょう。
そういう人たちのために美麗で、使い勝手がよくて、安価な電子書籍を今すぐに提供する。
そうすれば自炊を駆逐出来るんじゃないかなぁと自分は思います。


「アニメ動画作成」って実は、今やかなり絶滅に近い趣味なんです。
それはなぜか?
地デジ放送が始まり、アニメは無劣化でHDDに録画しブルーレイに保存できるし、セルのDVDやブルーレイも安価に提供されだしたから。
「アニメ動画作成」を趣味としてる人間からすれば手を加えるところがなくなって、腕の見せ所がなくなったのです。
これはそれを趣味としてない人間に言ってもまったく理解されないのですが、腕の見せ所がないってことは作ってても面白くないから作る意味を感じないのだとか。


そういうふうに自炊派に作る意味を感じさせないほど美味しい電子書籍を提供することが出来れば自分の感じた不安は杞憂に終わると思うのですが…、どうしても規制って方向に話が進むような気が。
そうしたら自炊って逆に止まらなくなるだけだと自分は思うのですけども。


自炊に待ったをかける電子書籍の提供。
この危機感に出版業界は気付かないと今年中に出版業界のとどめが刺さってしまうと自分は思います。
自炊派がレシピを増やすのが先か、美味い早い安い電子書籍の提供が先か。
カウントダウンはもう始まってるんじゃないかなぁ。


<PS>
電子書籍を提供するなら「いま一番売れてる本」を「今すぐ」提供すること。
そうしないと確実に失敗すると思います。
自炊派は「いま一番食べたいもの」を「今すぐ」作ってしまうのですから。
電子書籍がどうでもいい過去作の提供から始まったら逆に自炊派に駆逐されてしまうでしょう。


PS2
電子書籍の提供は今すぐにでもやらないとまずいと思います。
自炊派がレシピを着実に増やしてからでは見向きもされないでしょう。


PS3
自分で自炊して思ったけど、自炊を放っておくと本当にとんでもないことになると思います。
それを止められるのは「今すぐ」に「美味い」「早い」「安い」電子書籍を提供すること。
この危機感、本当にどれぐらいの人が気付くのだろう?