『半島を出よ』

というわけで夏コミの行き帰りに読んだこの本の感想を。

半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

一言で言っちゃうと「『北朝鮮VSオタク』を描いたジュブナイル小説」って感じかな。
北朝鮮の日本侵攻をリアリティたっぷりに描き、日本の未来に警鐘を鳴らす近未来シミュレーション小説、っていう感じで読むとかなり肩すかしを食らうかも。
この作品、序盤の「なぜ北朝鮮の反乱軍が九州に上陸して日本国民と共存する独立国家を作ろうとするのか?」という作中の疑問に対し、作者が迷ったまま筆をとってる気がするんですね。
だからエンドも"ああいう終わりかた"をするしかなかったのかなぁと。
終わりかたがかなりジュブナイル的で、"日本のオタク"である自分はカタルシスを感じたのですが、うーん、村上龍のファンのかたはどう感じるのだろうかしら。


この作品のテーマは「決断」なんじゃないかなぁと考えます。
「自分たちでは何も決められない日本政府」と「個人に決定権がない北朝鮮」。
責任問題に繋がるのがイヤで、自分では何も決めない日本政府。決めるのは偉大な首領様で、個人では何も決められない北朝鮮
ある事柄に対し個人では何も決めない・決められないっていう部分で、日本も北朝鮮も同じじゃないかとこの作品は投げかけてると自分は思うのです。
それに対し建設オタクのヒノがブーメランオタクのタテノに言ったセリフ。

お前が、やりたいことをやるんだ。
マガジンを交換しに、本当にあっちへ行きたいんだったら行け。行きたくないなら行くな。

自分はこの「やりたいことをやるんだ」ってのがオタクの本質だと思います。
いい年齢になっても見たいからアニメを見るし、読みたいからマンガを読むし、行きたいからコミケに行くし。
「いい歳をした大人はこうあらねばいけない」っていう、誰かが決めた約束事を鵜呑みにするんじゃなく、「俺たちはやりたいことを自分で決めてやってるんだ」と。
コミケに行くとそういう熱気をやっぱり感じますよね。


とりあえず、特殊能力を持った少年たちが強固な敵をうち負かしていく、というジュブナイル的展開をどうとらえるかでこの作品への評価はわかれると思います。