『バカでも描けるまんが教室』

今日はこのマンガの感想など。

  • 『バカでも描けるまんが教室』(著:新條まゆ、構成:飯塚裕之、発行:小学館

バカでも描けるまんが教室―新條まゆの(裏)まんが入門 (フラワーコミックススペシャル)
「手で描けるモノは手で描け」という飯塚氏に対し、「あるモノは使えばいいじゃないですか」と一刀両断する新條まゆ氏の、かなりガチンコなマンガ家入門マンガ。
プロのマンガ家として「自分の描きたいモノが描けない」という葛藤や、編集者とマンガ家との関係、さらにマンガを建築物に例えるなら設計図書の書き方や実際の施工方法までかなりガチで描かれているので読み物としても面白く、これからマンガ家を目指そうという人にはかなり参考になるんじゃないかなぁと思います。


売れっ子マンガ家を目指す人には、ね。


巻末に載ってる、新條まゆ氏のインタビューがこの本の一番のキモ。
同人誌で活動してる人がこのインタビューを読んだら、かなりブーイングの元になるんじゃないかと思います。
というのも新條まゆ

描きたいものを描くことが夢じゃない。
"マンガ家"という職業につくことが夢なのだ!!

と言っちゃってるぐらい、とにかくこの本ではプロの、さらに売れっ子になるための話がメインなので。
大手出版社で連載していくことの難しさを、これでもかっ!! ってぐらい描いてるので。


んでね、自分はこの本を読んで思った。


自分は「新條まゆ」というマンガ家をあまり知らないけれど、この人はある意味で少女マンガ界の衛宮士郎なんじゃないかと。
この人、自分の作品の評価は「単行本の売れ行き」というカタチでしか得られないんじゃないかな?
じゃあ、アナタの代表作は何ですか? と訊かれたとき、売上以外での話は出来ないんでは?


おそらくね、この本、地盤沈下を続ける少女マンガのてこ入れのために描かれたと思うんですよ。
「売れ線の最先端のセンセイも、こんなおバカな時期があったし、さらにデビュー後もこういうこともあるんだけど、マンガ家志望の皆さん、ちょっと投稿してみません?」って感じで。
つまり、マンガ家募集の販促マンガ。
でもね、このマンガを読んで、それでもプロになりたい!! と思う人はどれだけいるかしら。
自分の描きたいことも描けず、「読者へご奉仕すること」を生きがいとせよ、なんて、今の世の中には通じないでしょう。
それって、どんな「マンガ描き機械」なんだよ、って。


巻末のインタビューで「同人誌でなら十分儲かる」って豪語するんなら、「好きなモノが描ける」同人誌で一丁勝負してみませんか?
たぶん新條センセイは「どういう作品を描けば売上が上がるか?」で考えちゃうと思うんですけど、それじゃあ結局「自分の描きたいモノを描く」んじゃなく「儲かるモノ」を描いてるだけですよね。
それを後輩に押し付けることは出来ますか?


この本、かなりガチで描かれてるのは間違いないと思います。
でも、本音をぶっちゃければ場が荒れますよね?
そういう本だと自分は思います。