『社長を出せ!』

今日の一冊。

  • 『社長を出せ!』(著:川田茂雄、発行:宝島文庫)

社長をだせ! (宝島社文庫)
カメラメーカーのサービスセンターでクレーム処理に携わっていた著書が自身の体験談を交えながら、クレームにどう向き合うかを記した本。
体験談を読むと「あー、こんなお客さんいたよなぁ」と思い返して笑ったり、その当時の怒りがこみ上げてくる人もいるんじゃないでしょうか。


自分はクレームが起こる理由はふたつあると思うのです。
それはまず企業側に落ち度がある場合。
この場合のクレームはお客様の正当な抗議ですから、企業はその抗議を真摯に受けとめ、再発防止や品質向上に繋げる必要があるでしょう。
迅速な謝罪や製品交換、対策品など、この本に書かれているような真摯な対応を企業は取るべきです。


この本、実は本音と建て前の二部構成で書かれていると自分は思うのです。
企業に落ち度があり、真摯な対応をしなければいけない場合のクレーム対応はこの本では「建前」です。
このクレームを起こす人は企業が落ち度について謝罪し、きちんとした対応をすれば納得してくれます。
言ってみれば「話せばわかる人」ですから、企業がウソをつかず誠意をこめて話せばわかってくれます。
企業にとっては誠にありがたい、「お客様」という表現がピッタリな方々です。


そしてクレームが起こるもうひとつの理由は、ユーザー側が「クレームをつけてやろう」と思ってつけるクレーム。
ごねて金品や謝罪を要求したり、自尊心を満足させるためにメーカーに無茶な要求をしたりするケース。
つまり「話してもわからない人」「わかろうとしない人」「最初から聞く耳なんか持っていない人」。
ヤクザが因縁をつけるのと同じです。
「お客様」というより「謝罪ゴロ」「プロクレーマー」という表現がピッタリのヤツらです。
自分を含め、世間の人が知りたいのはこっちのクレームのケースだと思うんですね。
この本にはそっちのクレームのケースに著者のこういう本音が書いてあります。

ごね得型のクレームを起こす人の)なかには精神的な構造の変わった方や性格や品性に疑問のある方などもいらっしゃいますので

(神経質型のクレームを起こす人は)「こんなに細かいことを言っていて、よく社会生活ができるなぁ。奥さんに逃げられないのかな」などとよけいな心配までしてしまうくらいうるさい人が多いのですが、お会いしてみると、多くの場合、独身でいらっしゃる場合が多いのは偶然でしょうか?
また、このクレームは季節に関連する部分も見受けられ、いわゆる春の木の芽の時期などに増加する傾向もございます。

(思いこみ型のクレームを起こす人は)「わからなかったのは自分だけでなく、多くの人もきっとわからないだろう」というこの方の思い込みに過ぎないのですが、自分の能力不足や勉強不足は棚に上げて、他人のことまで心配する困ったタイプです。

(愉快犯型のクレーマーは)サラリーマンの弱みにつけ込んで言いたい放題なのですから、これも一種のいじめ行為でしょう。きっと甘やかされてわがままに育ったり、小さいときにいじめに遭った反動が、企業をいじめてストレスを発散させる愉快犯タイプのクレーマーを生んだのかもしれません。

などなど、著者が実際に体験して苦労した本音がうかがいしれる部分が散りばめられています。


しかしそういうケース、ヤクザが因縁をつけるような悪質なクレーマー処理の解決は、実はこの本には明確には書かれていません。
書くと対策を取られちゃうからだと思うんですが。
だからこの本にはかなり建前の対応しか書かれていません。
「誠意を持って話せばいつか絶対にわかってもらえる」という建前。
でもクレーマーには「謝罪ゴロ」とか「プロクレーマー」と言った、「絶対に話を聞かない、聞こうとしない、わかってもらえない」人たちがいます。
そういう人たちにどう対処すればいいのかという本音が知りたい人がこの本を手に取るのだと思うのですが、そういう人向けには話が書かれていないんですよね。


ただ、あまりにも悪質なクレームの場合は"要求を突っぱねる"という本音が書いてあります。
やりとりは逐次録音して記録に残し、文書での回答は一切せず、警察にも相談し、法廷など出るところへ出てもいい準備をしておく、と。
もちろん製品データなど、企業側に瑕疵・落ち度がないことを証明できる証拠も用意して。


お客様のクレームは企業にとって有益な情報であるから真摯に対応し、クレーマーの営業妨害という犯罪には毅然と対応する。
お客様とクレーマー、クレームと犯罪の見極めが大切であるというのがこの本のクレーマー対策なのかな。


ネットにもこういうクレーマーみたいな人がいますからね。
ですがその人の言ってることがちゃんとした意見なのか、クレーマーの因縁なのか見極めるのが大切です。
耳の痛い意見はすべてクレーマーの因縁だと受け流さず、真摯に受けとめて反省することも必要です。
すべてクレーマーの因縁だとしてしまうと成長がありませんから。
正当な批判や批評、異議申し立てはきちんと受けとめる。
サイト運営者にはその見極め、判断能力が必要でしょう。


その見極めをおこなった上でクレーマーの因縁だと思ったら?
ログを取っておいて、所轄の相談窓口に行くことをおすすめします。
この辺は悪質なクレーマー対策と同じです。