ダブルインカムの見果てぬ夢。

今週の週刊アスキー「仮想報道」では「第2日本テレビ」のサイトを紹介し、放送と通信の融合について考えていました。
その中で

究極的な"放送と通信の融合"というのは、テレビのコンテンツが、ネットの他のコンテンツとまったく同列に配信されるということではないか。
つまり、日本テレビがなくなって、『第2日本テレビ』だけになるというのが、ほんとうの"放送と通信の融合"のはずだ。

という文章があったのですが、それを読んでいて、つまり"放送と通信の融合"というのは"収入源が同じになる"ということなのだなと思いまして。
放送と通信の融合がなぜ進まないのかこれで自分なりに納得。


2006年1月現在、テレビ放送はCMによる広告が収入の大きな部分になっています。
しかしインターネットではテレビほどのCM広告収入は見込めません。
(ラジオの広告収入は抜きましたが)
そのためインターネットでは視聴者から課金することを前提にした視聴方法が取られています。
しかしこのインターネットで課金ってのはものすごくお金を回収するのが難しいんです。


テレビで見ればタダなのに、インターネットだとどうしてお金を払わなければいけないのか? と。
さらにお金を払う際のセキュリティの問題もあり、「タダなら見るけど、セキュリティの危険をおかしてお金を払ってまで見たい」と思う映像コンテンツはほとんどないのではないでしょうか。


放送局からすればテレビで広告収入、ネットで視聴者課金というダブルインカムが理想でしょう。
しかし後者が現時点ではほとんど不可能なわけです。
だからネットで映像コンテンツの配信をやろうと思うとテレビ側から制作費を持ち出さなきゃいけなくなります。
そうすると製作における収入の割合が減り、実質的には減収ということになります。


しかも問題なのは本来テレビ局がやれば収入になるところを、ロケフリP2Pソフトなどのフリーサービスが食い荒らしてる状態になっていること。
CM収入で作ったコンテンツがフリーで配信される状況になっています。
進歩したハードやソフトがそれを可能にしています。
そうであれば放送と通信には境目を作って、放送の収入は守りたいというのがテレビ局の考え方でしょう。
ネット視聴者からは課金で金を巻き上げたいという夢は捨てずに。


しかしですね。ここで視聴者課金じゃなくネットからも広告収入を上げるというふうに頭を切り換えればどうでしょう?
その切り替えをおこなっているのが「GyaO」なんですね。
つまり放送と通信の収入源は同じにしますよ、と。
収入源がCMであるならそのCMをたくさんの人に見てもらった方がいいわけで、それならバンバン配信しましょう!! と。
どんどん見てください!! と。
色々な機器やソフトなんか使わず簡単に、しかもタダで見られますよ、と。
その時、わざわざ「GyaO」のコンテンツをコピーしたりする人なんていないですよね。
いつでもどこからでもタダで見られるモノなんですから。


しかも「GyaO」側からすれば無料で流されていたコンテンツからも広告料を取れます。
昔の番組でも配信時に現在のCMをつけることができるのですから、チャンネルサーバーの役割を果たすこともできるでしょう。
コピー問題も防げて広告収入も見込める。
視聴者はどれだけ見てもタダ。
しかも放送者は見てもらえれば見てもらえるほど増収になる。
だからどんどん見てください!! と。
これは放送者と受信者にとって良い関係と言えるのではないでしょうか。


つまり"放送と通信の融合"ってのはテレビ局がダブルインカムの夢を捨てることだと自分は思うんですよ。
ダブルインカムの道を必死に探してるから融合できないわけで、しかもダブルインカムは放送者と受信者、双方にとってあまり良い関係ではないんですね。
放送者にとっては制作量と相対的に収入が落ちるし、受信者からすればなぜタダのモノにお金を払わなければいけないのか? 二重取りじゃないか? と。
それじゃあコピーしよう。じゃあコピーさせないように機器やソフトをがんじがらめにしよう。そして視聴料払え。バカらしい、やっぱりコピーだ……といたちごっこが続きますしね。
しかしこのダブルインカムの夢を捨てれば「GyaO」のように、コピーの意味がなくなりさらに収益を得られるという部分で放送と通信の融合は出来るわけです。
(「GyaO」が融合の究極の姿かというと、自分の考えてる姿とはちょっと違いますが。)


放送と通信の融合は、まずテレビ局のサイフの融合から。
収入が同じところから、というのがスタート地点だと自分は考えます。