『牢屋でやせるダイエット』

今日の一冊。
『牢屋でやせるダイエット』(著:中島らも、発行:青春出版社


ダイエット本がバカ売れしてるらしいので、それじゃ俺も作ってみようと。
そのタイトルが『牢屋でやせるダイエット』……という、氏の著書でのネタがあったんですが、それを地で行くことになろうとは。


大麻取締法違反(大麻所持)と麻薬及び向精神薬取締法違反(マジックマッシュルーム所持)で厚生労働省麻薬取締部、通称「マトリ」に引っ張られていった氏の21日間の拘置所生活をえがいた一冊。
「ダイエット」本というより「How to 拘置所」本(ただし独房)になっております。


拘置生活四日目、最大の禁断症状を切り抜けたあと、ヒマでヒマで「売るほど時間がある」生活を過ごす秘訣が書かれてまして、ひとつは何でも体験してみようと思う好奇心、もうひとつは客観的に自分を見る第三者を作り出すこと。

メモを取っていると、自分の身に降りかかったことでも他人事のように客観視できる。たとえ酷い目に遭っても、その日の夜、メモを取る時点になると笑える話に置換されていく。
「ああ、こいつ、今日もえらい目に遭いよったな」と、おれ自身が楽しめるようになるのだ。

大槻ケンヂが『綿いっぱいの愛を!』で書いたことも、客観視する第三者の自分を置くことで、悲惨でつらい目もネタに転化していくやり方。
自分もこのやり方は効くと思います。
たとえ「○○○○○○て、○○○○○○○ぞ!?」と恫喝されても、いまこの場で書いちゃえばそれも楽しい経験。
次は何を言うんだろう? と楽しみにすらなっちゃいますもん。


結局、氏は21日間の拘置生活でダイエットどころか4キロも太って娑婆に戻るわけですが、それも理由があって、拘置所のあまりの寒さに皮下脂肪を付けなくちゃ耐えられなかったからだとか。
他にも理由があって、ダイエットって健康のためにおこなう場合もあるんですが、自分の容姿を良くしたいと思う理由でおこなわれる場合が多いと思うんです。
しかし容姿の改善ってのは改善された容姿を見せる相手がいて始めて成り立つんです。
拘置所には人と人の繋がりがない。人間の関係がない。だからダイエットも必要ない。


拘置所ではダイエットできない、という結論に達したこの本。
拘置所や刑務所という厳しい環境ならダイエットできるんじゃないか?」という考え方で犯罪を起こそうと考えてる方は是非お読みください。
(そんなヤツはおらへんか(笑))