バットマン・ビギンズ

映画『バットマン・ビギンズ』を観てきました。
直接的なネタバレは避けるつもりですが、ネタバレが気になる方は読み飛ばしてくださいね。


感想は……んー、自分には合わなかったかなぁ。
自分はバットマンのガチガチのファンではないんですが、このシリーズの魅力って個性的な悪役だと思うのですね。
その個性的な悪役がビギンズには登場しない。
バットマンがビギンズなら悪役もビギンズなんですね。
何もかもが"ビギンズ"、始まる前なんですよ。


言ってみればアムロガンダムに乗る1話を2時間かけて見せてるようなもんなんですね。
アムロの生い立ちはこうで、父親がこうで、母親がこうで、フラウはこうで、アムロは機械工学を勉強していて、ガンダムはこういうふうに作られていて、サイド7はこうで…っていうのを延々とやってるんですよ。
そういう裏設定みたいなものってガンダムのマニア的には面白いのかもしれないけれど、ストーリーとして面白いのかなぁ。


"正義の味方"がなぜ正義の味方になったのか色々な作品でも語られてますが、『バットマン・ビギンズ』はその正義の味方を志す動機や方法に「?」がつきすぎると思うんですね。
「それだけ金持ってたらどうとでもできるやろ?」と。
そう考えると『スパイダーマン2』って"正義の味方"の定義づけとしては完璧だなぁと思うんですね。
スパイダーマンバットマンを見比べるとどうしてもバットマンの正義の味方の動機が見劣りしちゃうんですよ。
「それやったらウェイン、スパイダーマンのスポンサーになったれや?」と。


とここまで書いてきて思ったのは、どうも自分はバットマンが正義の味方に思えないから納得できないんだろうなぁ。


スパイダーマンや『Fate』の衛宮士郎って、世間の人が安全に楽しく暮らせるための"普遍的な正義"のために働いてるのに対し、バットマンは「悪を自分のチカラで押さえつければ、まだマシだろう」って感じなんですよ。
でもそれってアフガンやイラクに攻め入ったアメリカと同じ。
スパイダーマンや士郎が見返りを求めないヒロイックな"献身的な行為"をおこなってるのに対し、バットマンはマフィアが押さえつけるより自分が押さえつけた方がいいだろうって感じなんですよ。
フセイン独裁政権よりアメリカ民主主義の方がいいだろう? と。
そういう政治的なものが見えるからヒーローものとしてのカタルシスが『バットマン・ビギンズ』にはないわけで。


アクションもSFXもすごいんですが、そういう政治的なものが少し透けて見えたので自分にはちょっと合いませんでした。


PS


コメディ映画としてこの作品を見ると"不謹慎なブラックな笑い"でものすごく笑えます(笑)。